生成AIの利用におけるリスク

近年の急速な技術進歩により、様々な生成AIが登場しています。
簡単に短時間でコンテンツを自動で生成できるようになったことから、既存のビジネスや業務のあり方を変えていく存在として、大きな注目を集めています。

すでにテキスト作成AIや画像生成AIなどは幅広く利用され、レポートの要約や広告用の画像や動画の生成まで行われています。
今回の記事はそんな便利な生成AIを活用するうえで気を付けるべきリスクについて触れていこうと思います。

 

●生成AIとは

生成AIとは、「ジェネレーティブAI(Generative AI)」とも呼ばれ、学習した大量のデータからパターンや関連性を理解し、文章・画像・音声など新たなコンテンツを生成するAIのことを指します

従来のAIが決められた行いを自動化するのに対し、生成AIはデータから学習したパターンや関係性を活用し、テキスト、画像、動画、音声など多岐にわたるコンテンツを新たに生成できます。

●生成AIを活用するうえでのリスク

生成AIを業務で活用するうえで気を付けなければならないことは多岐にわたります、その中でも代表的な5つを紹介します。

①機密情報の漏洩
②著作権・商標権などの権利侵害
③間違ったアウトプットの生成(ハルシネーション)
④倫理的に不適切なアウトプットの生成
⑤生成AIの過信による業務ミス

 

①機密情報の漏洩
オープンAIなどは各ユーザーが入力したデータは、生成AIが学習し進化するために、基本的にはクラウド上などに保管されます。

そのため、会社内部の機密情報や個人情報などを入力してしまうと、生成AIサービス提供者や他のユーザーに機密情報が流出してしまうリスクがあります。

 

②著作権・商標権などの権利侵害
生成AIの既存の著作物を学習データ活用することは、原則として著作権者の許諾なく可能とされています。一方で、生成AIによって生成されたコンテンツの公開や販売をする際には、基本的には通常の著作権侵害の検討が適用されます。

生成されたコンテンツに、既存のコンテンツとの類似性や依拠性が認められれば、著作権者は著作権侵害として損害賠償請求・差止請求が可能であるほか、刑事罰の対象となりえます。

 

③間違ったアウトプットの生成(ハルシネーション)
生成AIの利用によっては、事実と異なる誤った情報/アウトプットを真実のように堂々と生成するハルシネーションという現象が起こります。

高度な専門性を要する分野での回答や定量データの抽出や計算において、ハルシネーションが多く見られる傾向にあります。

 

④倫理的に不適切なアウトプットの生成
生成AIのアウトプットは学習データの内容に大きく左右されるため、学習データのボリュームが少なく、内容にバイアスがある場合、人種や性意識に関する差別や憎悪を助長する内容など、倫理的に不適切なアウトプットが生成されてしまうリスクが存在します。

 

⑤生成AIの過信による業務ミス
生成AIは入力データに依存して機能するため、そのデータが不完全だったり偏りを持っていたりすると、生成される結果も誤りを含むことがあります。
さらに、生成AIは人間の倫理感覚や判断能力を有していないので、提供する情報が常に正確であるわけではありません。

例えば、生成AIを利用して法的な契約書を作成した場合、誤った法的内容を含む文書が作成されることも考えられます。このような状況では、法的な問題に発展する可能性が高まり、その結果、深刻なトラブルに繋がるリスクがありるため過信は禁物です。

 

 

このように生成AIは全ての業務に対して万能という訳ではなく、明確に得意不得意が存在します。
正しく使えば業務の自動化による人手不足解消やコスト削減、品質とスピードの向上などにもつながりますが成果を最大化し、リスクを最小化するためには、活用する範囲を適切に設定することが極めて重要です。
これにより、意図せぬ情報漏洩や権利侵害、不適切な情報生成や不意の法的問題の防止につながります。

生成AIを正しく有効に活用するためには学習データを悪用されないようなシステム構築や使用範囲・機密情報の取扱等の運用ルールの策定をし、活用するユーザーのAIリテラシーを向上させることが不可欠です。

皆さんも便利なものを闇雲に使うのではなく、リスクと対策についても意識しながら正しく有効活用できるようにしていきましょう。